遺産分割協議に時間がかかっているAさんの場合
Aさんには、とても尊敬できるお父様がいました。
長男であるAさん、そして次男、長女、次女と4人の兄弟姉妹をたった一人で育て上げてくれたお父様でしたが、9ヶ月ほど前に他界してしまいました。
当初は他界したことが信じ難く、葬儀なども兄弟に言われるまま長男であるというだけで率先して進めてきました。
数ヶ月して、ようやく父の死を受け入れることができたのですが、1つの問題が生じてしまったのです。
Aさんのお父様には、相続税申告が必要なほど多額の財産があり、特に遺言書なども残されていなかったため、財産の行方を巡って兄弟姉妹で揉めているのです。
・言いたい放題の兄弟姉妹
法定相続分である4分の1ずつという案をAさんは出しているのですが、一番長い間、面倒を見てもらったのは長男であるAさんなのだから、若い順に多く財産を相続すべきだという意見、誰が一番父の面倒を見てきたのかで決めるべきだという意見など、様々な意見が混在しています。
話し合いは平行線で、ついには相続税申告の期限である10ヶ月が目前に迫ってしまいました。
これ以上どうしたら良いのかわからず、Aさんは専門家に相談することにしました。
・相続税申告は待ってくれないが・・・
上記のように、遺産分割協議が終わっていないからといって、相続税申告の期限は待ってはくれません。
こういった場合、民法にて規定する包括遺贈(財産の何分の1を相続といった分割の仕方)に則って、とりあえずは相続税申告をしなければなりません。
この際、相続税の減額の特例などの利用ができないため、いったんは多くの税金を納めることになります。
しかし、遺産分割協議が成立後、4ヶ月以内(かつ、相続税申告から3年以内)であれば相続税の「更生申告」が可能となっていて、特例を受けられずに多く税金を納めていた場合は返ってくるのです。
・遺産分割協議も無事にまとまる
Aさんの状況を見た専門家は、まずは相続税申告だけを先にしてしまう提案をしました。
その後、ゆっくりと遺産分割協議を進めていき、無事に全員が納得いく形で終了することができました。
兄弟姉妹だけの話し合いに、専門知識を持つ第三者が加わることで、言いたい放題だった話し合いの場は冷静さを取り戻すことができたのです。
相続税申告は期限が決まっているため慌てがちですが、専門家を交えることで全員が冷静になり、制度の仕組みをうまく利用し、無駄な税金を納めずに済みました。